曽野綾子「老年を幸せにするためには、自分の幸福だけ求めてはいけない」1998年10月撮影、本社写真部
人生100年時代と言われる昨今、1931年生まれの作家、曽野綾子さんも現在91歳となりました。60代、70代、80代、90代と年齢を重ねるにあたって変わる体調や暮らし、人づき合いへの対処法についてさまざまな考えを巡らせてきた曽野さんですが、特に「60歳に差し掛かったら、そこからいかに生きるか」をあらためて考えるべきと言います。一方、老年を幸せにするためには、自分の幸福だけ求めてはいけないそうで――。

老年を幸せにする四つの条件

老年の幸福を、私はあえて健康を別にして考えたいと思う。なぜなら健康は深酒、喫煙のような自分に責任のある要素を除くと、素質的な要素が多いから、自分の自由にならないのである。

そして健康という要素を除外しても、私を幸福にしてくれる要素は四つあるだろうという気がする。

第一の単純な条件は、身辺整理ができていることである。

まずガラクタを捨て、家の空間を多くする。自分にとって大切なものも、私の死後は、娘や息子にとってさえ要らない場合が多い。ましてや他人には何の価値もない。

写真、記念品、トロフィー、手紙、すべて一代限りで今のうちにさっさと捨てる。その捨てるという作業に専念できる日が目下の私にはそれほど多くないので、整理は遅々として進まない。