「理事長になった運命を楽しもう」と

その私が五十年の時を経て日本大学の理事長になりました。あの頃、あんみつ屋で失敗ばかりしていた自分を筆頭に、いったい誰が想像出来たでしょうか。

理事長に就任した際のニュースを受けて、ネット上では「林真理子の野心もここまでくると清々(すがすが)しい」という声もあったそうです。

『成熟スイッチ』(著:林真理子/講談社現代新書)

しかし、この件に関しては野心ではなく使命感であり、運命だったと思っています。皇太子妃になる雅子さまに向けて曽野綾子さんが書いた「運命をお楽しみください」という言葉のように、「理事長になった運命を楽しもう」という気持ちでやっています。

ラッキーだったのは、就任する前に出した本が立て続けに売れていたこと。『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』とベストセラーを出せていたので、「作家で売れないから理事長やったんだ」と意地悪なことを言われなくてホッとしました。