「成熟の完成型」瀬戸内寂聴先生
人は年をとると外見だけではなく内面も変化していきます。よい方に変わっていくと、精神や人間性が成熟へと向かいます。
私の中で「成熟の完成型」として真っ先に思い浮かぶのが、2021年11月に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴先生です。
人間は成熟しきると、大抵のことはどうでもよくなってくる。寂聴先生のように、いろんな人を受け入れ、いろんなことを許してあげるということは成熟の証(あかし)だと思います。
寂聴先生の思い出はたくさんありますが、まだ昭和の時代、六十代半ばだった先生が開かれたパーティーに、突然の婚約破棄が芸能ニュースで大騒ぎになった俳優さんの婚約者だった女性がやってきた時のことです。
いろいろと怪しい彼女のことを当時の私は嫌っていました。その俳優さんと出会ったきっかけにしても、たまたま楽屋に挨拶に行ったということでしたが、
「お芝居を観に行くだけのために、わざわざ振袖を着て行くわけないじゃん」
などと、よく悪口を言っていたものです。週刊誌も経歴詐称疑惑を特集したり、彼女は世間的にも札付き者のようになっていました。