陶芸家の八郎を演じたのをきっかけに、自身も陶芸に没頭(写真提供:松下さんインスタグラムより)

突然できた貴重な時間。新しいことに挑戦

今年の2ヵ月にも及ぶ自粛生活で、世の中は大きく変わりました。それは僕のなかでも同様で、過去を振り返り、これからのことを深く考える貴重な時間でした。

残念だったのは、映画『燃えよ剣』が公開延期になったことや、初めてのライブツアーを中止せざるをえなかったことですね。ライブでは曲に込めた僕の心がストレートに伝わるように、セットもシンプルにするなど、いろいろ企画していただけに本当に悔しくて。やはり最初は、ショックで落ち込みましたが、次第に心境に変化が起こっていったのです。

僕は、一度不安や孤独を感じてしまうと、それに足を引っ張られてしまう傾向があります。だから今回は、仕事ができずにいる日々をマイナスに捉えるのではなく、久しぶりにとれた休みだと考えて、1日も無駄にしないように心がけました。

振り返ると、ここ4年間くらいでさまざまな作品に携わらせていただきました。16年はこまつ座の「戦後“命”の3部作」の第2作『木の上の軍隊』再演。17年は音楽劇『魔都夜曲』。18年には3部作最後の『母と暮せば』やミュージカル『スリル・ミー』。19年からは『スカーレット』の収録で、半年以上大阪暮らしが続き、またこの年には『木の上の軍隊』の再々演もありました。一方でYouTubeでミュージックビデオを配信し、ライブを開催。

そんな日々から一転、やってきた休み。何もしないでいることが僕にとって特別なことだったと気づき、仕事以外のことに時間を割いてみることにしました。

新型コロナのせいで命について深く考えた時期だからこそ、友達や家族と絆を深め合おうと、オンライン飲み会も開催しましたね。普段あまり積極的に人と会うほうではなかったのですが、率先して開催し、みんなに参加を促し……。リアル飲みと一味違って、楽しかったです。

家でも普段やらないことに挑戦しました。忙しくて作れなかった、手の込んだ料理を、レシピを見ながら作ってみたり。らっきょうまで漬けちゃいました。(笑)

時間的・精神的に余裕が生まれたので曲作りもできました。少しでもみなさんの心が和らぐような曲を作れたらと、思いを込めて。ここ数年分の、「したくてもできなかったこと」を一気にやった2ヵ月でした。

ドラマ『MIU404』で共演した綾野剛さんの撮ってくれた写真をもとに、自画像を仕上げたそう(右)/「令和」をモチーフにしたイラスト(左)(写真提供:松下さんインスタグラムより)