で、なんでまた大阪?

そもそも、だ。

なぜ息子は生まれ育った神奈川を離れて、同じく高校野球激戦区・大阪へ行こうと思ったのか。普通であれば、激戦区から地方の高校に留学することは多い。寮が併設されていれば、かなり生活の心配は少ない。日本全国いくらでも野球のやれそうな高校はあるのに、なんでまた大阪を選んだのか。

この話をするたびに…私は一抹の冷たぁいものを背筋に感じずにはいられない。

夫・元木大介の実家は大阪の豊中にある。普段から立派な先祖の墓をピカピカに磨いてお参りする家だ。実家から車で10分ほどの墓地へは両親が健康のために歩いていくほど、墓参りには便利な場所にある。

私も嫁入り後からたびたび訪れては手を合わせている。子どもたちも生まれてから盆暮れに帰省するたび、みんなでお墓に行って顔が映るほど墓石をピカピカに磨き上げ、花を入れ替えて手を合わせる。「まんまんちゃー、あん」と言いながら子どもに手を合わさせる。不思議な言葉だ。まんまんちゃー、あん。

元木家のお墓の前で、姑に抱かれる翔大(写真提供◎大神さん 以下同)

いつも実家からお墓までの道すがら、翔大はおじいちゃんの膝の上に乗せられて「ここが甲子園によう出てる高校やで。翔大もここに入って野球やらんか?」そう言って必ず学校を指差しながらそばを通り過ぎていた。

「いや…それはない」嫁の私は心の中でいつもそう呟きながらニッと笑った。