見えない力に動かされているような感覚

幼稚園の時、どんなに勧めても野球に興味を示さなかった息子が小3のある日、突然サッカーをやめて野球がやりたいと言い出した。ちょっと小声で言ったつもりが、待望の言葉を聞き逃さなかった父親によって瞬く間に野球道へと導かれていった。気が付けばプロ野球を引退してすっかり「テレビの人」になっていた夫が、息子を通して久々にグラウンドに立っていた。

そこからの夫は、あっという間に野球の世界に再び戻っていったのである。

なんだか、見えない力に動かされているような、「なんでなんで??」な不思議な感覚はたしかにある。夫よりむしろ、私に。

4年前の年末に義父が亡くなり、まもなく生前自ら建てた元木家の墓に納骨された。年が明けると夫はコーチとして読売巨人軍のユニフォームに再び袖を通した。生きていたら誰よりも義父は息子の野球復帰を喜んだに違いない。

そしてそこから1年半ほど経ったころ。

翔大が野球をやるために進学を希望したのは、まさかの、大阪のお墓近くにある高校だった。

「え?」

冗談かと思って何度聞き直しても、いたって大真面目に答える翔大。そしてなぜか本当にご縁をいただいて、あれよあれよという間に大阪への進学が決まってしまった。

実際、本当に推薦入学が決まってから落ち着いて「大丈夫だろうか?」と限りない心配が始まったと言っていいかもしれない。

そしてさらに落ち着いて考えたとき、私の頭の中をふぅ~っと、あることが通り過ぎていった。

「お墓に入ったおじいちゃんが、翔大をすぐそばの高校に呼んでいるのでは…」

お墓参りをする夫・元木大輔

義父がお墓から手招きしているようにしか思えない、翔大の大阪進学…。

本人は「父親の勝負した大阪で、一番強い大阪桐蔭を倒したい」と思った、といたって真面目に考えたらしい。それ、神奈川の学校ではあかんかったのでしょうか。

見えない力に動かされていることって、ありますよね…。

合掌。