●体温伝達と末端の血流の仕組み写真を拡大

脂肪は多すぎるのも少なすぎるのもNG

次に、体温をつくりだす〈熱〉はどのように生まれているかについても説明しておきましょう。

熱を生みだすものは、主に2つあります。1つは、「基礎代謝」。私たちの体は呼吸をしたり心臓を動かしたり、生命維持のために臓器が絶え間なく動いています。この活動に使われるエネルギーが基礎代謝です。脳や心臓、肝臓、腎臓、腸、筋肉の動きが活発なほど、エネルギーが消費され、熱がつくられます。

中でもエネルギー消費が多いのは筋肉。つまり、筋肉量が増えると、つくられる熱の量も多くなるということです。

そのほかにも、食べ物を嚙んだり、消化吸収したり、栄養の分解や合成をしたりするときの「食事誘発性熱産生」という代謝も、熱をつくりだします。食事により摂取したカロリーの約80%は体内で最終的に熱に置き換えられるため、熱を生むためにはバランスのよい食事を三食摂ることが欠かせません。

2つめは、「褐色脂肪細胞」がつくりだす熱。褐色脂肪細胞は脂肪の一種で、脂肪を効率的に熱に変える働きがあります。

これまでは加齢とともに減少し、50代以降はほとんどなくなると考えられていましたが、最近の研究で高齢者にも残っていることがわかってきました。褐色脂肪細胞を活性化するには、寒冷刺激が効果的です。寒くても散歩などにでかけましょう。

このようにして体内でつくられた熱は、血液にのって全身に運ばれます。手足の先と顔の一部には「AVA(動静脈吻合[どうじょうみゃくふんごう])」という血管があり、心臓から送りだされた血液を運ぶ「動脈」と、心臓に血液を戻す「静脈」をつないで、体温調節を行っています。体内に熱が増えるとこのAVAが開いて(拡張して)熱を逃がし、熱が不足すると閉じて(収縮して)熱を守るのです。