実は高齢者がもっとも気をつけてほしいのが、「低体温症」です。低体温症とは、末端の冷えとは異なり、深部体温が35℃以下になってしまう状態のこと。雪山で遭難したときなどに起こる状態をイメージするかもしれませんが、高齢者の場合は寒い部屋でじっとしているだけで発症しかねないのです。
その理由は、温度を感知する皮膚のセンサーが鈍ってしまっているため。熱をつくり巡らせる機能が低下しているうえに冷えていることを感知できず、薄着で過ごしたり、暖房をつけなかったりして、低体温症になる可能性があるのです。
たとえば、高齢者が認知症を患い、夜間に徘徊してしまった場合、冬場だと低体温症のリスクが高まります。体温が35℃を下回るとやがて意識がなくなり、最悪の場合は命を落とすことも。そういう意味では、冷えている自覚がなくても普段から体を温める意識を持つことが重要です。
加えて運動習慣を身につけ、筋肉を増やす努力もしてください。太ももの筋肉は大きいので、効率的に熱をつくることができます。スクワットや、階段ののぼり下りをするとよいでしょう。
筋肉を動かすと、血管をやわらかくする「NO(一酸化窒素)」という物質がつくられるので、しなやかな血管の維持にも効果的です。筋トレが難しい人は、散歩でもかまいません。
もちろん、食事にも気を配りたいところ。たんぱく質、脂質は熱を生みやすい食材です。肉や魚を積極的に食べるようにしてください。そして血管を守るために塩分を減らし、甘いものは控えめに。野菜は熱を生む食材ではありませんが、バランスのよい食事のためにはしっかりと摂りましょう。
痩せ形だった私の妻も長年冷えに悩まされていましたが、散歩を始め、5kgほど体重を増やしたところ、冷えが改善されたようです。しっかり食べ、運動を続ける。基本的なことですが、そういった生活習慣の改善が冷え対策になるのです。また、ストレスなくリラックスして、副交感神経を優位にする生活も、冷えを遠ざける大切なポイントになるでしょう。