年の差恋愛の始点は『ロンバケ』

遅ればせながら、やっとここで本題に文章を滑り込ませることができる。

『ロンバケ』にはもっと女性の心を震わせた始点があるのだ。それは主役の男女二人、女性の方が7歳年上だったこと。今でこそ普通の条件になった、年上女性と年下男性の恋愛が、1996年の日本ではとても珍しかった。

『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(著:小林久乃/青春出版社)

当時は同学年から男性が5歳年上くらいが、カップルの適性とされていた。女性が年上であると、周囲に交際を打ち明けづらい……ということもあったほど。

それでも結婚となると『一つ年上の女房は金(かね)のわらじを履いてでも探せ』と、愚にもつかない格言で祝われる。夫となる人は仕事に励み、家庭を守ってもらうため、しっかりとした年上女性と結婚しろ、という意味である。令和でこんなことを言い出したら、一発大炎上は確定だ。

そんな世情にもかかわらず、南と瀬名の年齢差はあまりにもナチュラルだった。

明るい性格で、どこでも誰とでも、丁々発止で話せる南。でも大雑把でどこか抜けている。対するように真面目で、引っ込み思案で、元々の造形美が浮いてしまう瀬名。

最終的には年の差があることは忘れてしまうほど、二人の関係性に視聴者は吸い込まれていった。年齢なんて付属品なのだと『ロンバケ』で思い知ったのだ。