過去1000年間で最大の発明をした人とは

西暦2000年を前に、過去1000年間で人類に一番大きな影響を与えた人が誰かというアンケートが世界の知識人を対象に行われました。誰が選ばれたでしょうか?

『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』(著:田村哲夫/聞き手:古沢由紀子/中央公論新社)

活版印刷を開発したグーテンベルクです。いかに文字が人間に大きな影響を与えたかが分かると思います。ヨーロッパでは、文字で書かれた本などが1450年代、グーテンベルクの活版印刷によって人々に広まりました。それまでは一冊一冊手で写すか木版を使っていたのですが、活版印刷なら大量に本を作って内容を広めることができます。

グーテンベルクが活版印刷を発明した場所も重要です。ヨーロッパ大陸には、パリからモスクワへ行く道、ロイヤルロードと呼ばれる中核の道路があります。この道に沿っていろんな国が興り、ヨーロッパは豊かになっていきました。

もう一本は、ローマからバルト海に抜ける道で、この二つの道路がヨーロッパの各地域の文化を伝達する経路になりました。不思議なことに、その交差点があるドイツのライプツィヒという町の近くで、グーテンベルクが活版印刷を発明したんですね。近くには、ルターが宗教改革を宣言した教会もあり、彼の主張が一挙に印刷されてヨーロッパ中に広がったのです。

ライプツィヒは地方都市でありながら、ドイツの国立図書館がある場所でもあります。第二次世界大戦後、ドイツが東西に分断されたため、西ドイツはフランクフルトに国立図書館をつくりましたが、統一後は、東ドイツだったライプツィヒに戻しました。その国立図書館はヨーロッパ文化を支えるようなすばらしい図書館で、活版印刷が発明された地だからこそ、再び設置されたのです。

さらに、日本の岩波文庫がモデルにしたという有名なレクラム文庫も、ライプツィヒの出版社で生まれました。ドイツだけでなく、世界の書物の文化の中核だったのですね。今でも、ライプツィヒでは例年、世界的に有名な書籍見本市が開かれています。