子どものために文学が必要
子どものための本を作る運動は、日本にもありました。『赤い鳥』という雑誌を作って子ども向けの小説や童話を掲載し、本にして発刊するという運動が大正から昭和にかけて続きました。復刻本を買って持っているので、それを次回、全員に見せます。
たとえば芥川龍之介など、有名な作家の作品もたくさん載っています。あなた方は小学生の頃からいろんな本を読んできたと思うけれど、子どものために文学が必要だという当時の考え方が背景にあったということを意識して、その心を生かしてほしいと思います。
本は大事だよ、一生懸命読んでみようよ。君たちはまだ若いし、子ども向けの本もたくさんあるから、今のうちにしっかりした読書をして将来大人になる道を歩んでほしいと思います。
※本稿は、『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』(著:田村哲夫/聞き手:古沢由紀子/中央公論新社)
「共学トップ」渋幕、渋渋。両校の教育の本質は、「自調自考」を教育目標に掲げたリベラル・アーツにある。その象徴が半世紀近くも続く校長講話だ。中高生の発達段階にあわせ、未来を生きる羅針盤になるよう編まれたシラバス。学園長のたしかな時代認識と古今東西の文化や思想、科学への造詣――前半は、大人の胸にも響くこの「魂の授業」を再現。後半は読売新聞「時代の証言者」を大幅加筆。銀行員から学校経営者に転じた田村氏が、全く新しい超進学校を創り、育ててきた「奇跡」を振り返る。