若年女性人口の増加で見えた「脱却」
ーー財源はどう確保されたのでしょうか。
東京特別区の予算は、区として独自色を打ち出すことが、通常では難しい仕組みになっています。しかも、豊島区は千代田区や中央区などのようなお金持ちの区と違って、予算でいえば下から数えた方が早いほど。その中で私たちは、常に財源を増やす工夫をしてきました。
たとえばその一つに、「狭小住戸集合住宅税」、通称「ワンルームマンション税」があります。これは、一戸30平方メートル未満のワンルームマンションを建築する業者には、一部屋につき50万円の税金をかけるというものです。
豊島区の人口密度がなぜ日本一かというと、ワンルームマンションが林立していることが理由に挙げられます。池袋駅という巨大なターミナルがあるがゆえに、居住性よりも交通の便を優先するマーケットが拡大しているからですが、ここで何もしないでいると、ワンルームマンションのまちになってしまいます。
ワンルームは子育てには向いていないので、子育てをサポートするにはワンルームを抑制する必要があります。ワンルームマンション税は、04年の施行から19年までに約60億円の税収があり、これも豊島区ならではの独自財源になっています。
ーーユニークですね。
「消滅可能性」というインパクトある言葉をいただいたおかげで、その重要性を、みなさんが共有してくれた。だからこそ、長年の課題だった子育て層へのサポートを、次々と実行していくことができたのです。
ーーそれら政策の効果は、どのように測定されましたか。
若年女性人口の増加が、数字に表れました。日本創成会議による14年の将来推計では、豊島区の40年の若年女性人口は2万4666人。10〜40年の減少率は、先に述べた通り、マイナス50・8%でした。
しかし、子育てへの手厚いサポートを行ったことで、豊島区の若年女性人口は、14年の4万5520人から、18年には4万8055人と、2500人以上増えたのです(図1)。そして、2018年3月の国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、15〜45年の30年間の若年女性の減少率はマイナス18・9%と大幅に改善。「消滅可能性都市」からの脱却です。