「やりたいことを我慢するのは毒なんだと悟り、今後はストイックなだけでなく、自由も許して緩急をつけて生きていこうと決めました。」

我慢ばかりでは毒になる

そもそも今回のカバーアルバムは、「ロマンスの夜」と題したコンサートへの招待状のつもりで制作したものでした。東京・有楽町で22年11月に開催予定で、その日を目指して練習を重ね、趣向を凝らした舞台演出の準備も進めていたのに、不覚にも風邪をひいて40度の熱に見舞われ、中止を余儀なくされてしまい……、うーん、今でも悔しい。楽しみにしていてくれた方々に対する「ごめんなさい」という気持ちでいっぱいです。

おかげ様で恢復し、12月上旬の神戸でのコンサートは実現できたんですけど。「恋人がサンタクロース」を歌った時、会場にいる女性たちが少女の顔になっていると感じて、私自身が幸せを享受するという嬉しい場面もありました。

とはいえ自己管理の未熟さに対する反省は拭えません。言い訳がましいようですが、エレファントカシマシの4年半ぶりの新曲「yes. I. do」の制作・レコーディングに続き、切れ目なくカバーアルバム作りに突入するという強行軍で。そこへコンサートや歌番組出演も重なって……。

自分ではどうにかなると思っていたんだけど、無茶だったんですよね。小林さんにも言われました。「宮本も56歳。四捨五入すると還暦の立派なオヤジなんだから、休むことも覚えなくちゃ」って。

今にして思えば、精神的にも変でした。やたらと短気だったり、毎日酒を飲んじゃったりして。ところが面白いもので、心身ともに絶不調の最中に、私は数々の気づきを得たんですよ。日頃から糖質を控えようとコンビニで食べ物を買うのを禁じていたんですけど、薬を飲むので何か胃に入れなくちゃとおにぎりを買って食べたら、旨くてねぇ。

あるいは私が習慣化しているルールのひとつ「朝起きたらネクタイをする」をやめたら、すごく楽になったりもして。そーか、自分で自分を縛って苦しめていたのかと。