いい人は卒業! できるだけ自然に、楽に逝きたい
海南病院の緩和ケア病棟では難しいのですが、施設によっては「お酒持ち込み可」のところもあります。
がんを患い、すべての治療を終えた70代の男性・Aさんは、そんな「お酒OK」の、とある緩和ケア病棟に入りました。
旅立ちの前に、ある“計画”を実行するために。
家族のために懸命に働き、時には理不尽な事態にも頭を下げてきたAさんですが、もともと束縛されるのが大っきらいでした。
管だらけになってまで生きていたくないと強く望み、胃ろうを拒否したうえ、「仕事も家庭も頑張ってきたけれど、そろそろ“いい人”は卒業! できるだけ自然な形で、楽に逝きたい」
そう願った彼は、まだ動けるうちに、いくつかの緩和ケア施設を検討。
運よく空きがあったこともあり、最終的に、アルコール持ち込み可の病院──仮にB病院とします──を選びました。
実はAさんは、パチパチ弾ける泡系のお酒が大好き。
しかし、がんになってからは、毎晩欠かさなかったビールなどを、ずっと控えてきたのです。
「最後くらい、景気のいいお酒が飲みたいな。せっかくだから、みんなと、とびっきりの1本を!」
そんなAさんの願いを叶えたのは、家族でした。