「母さんは、宝くじを買うのをやめる」

そして気がつくと今、50代も終わろうとしている。まだ一度も、宝くじの神様は私のもとにやってきてくださらぬ。

長い年月の間には、手をかえ品をかえ、自分なりに工夫してみた。1等の当選本数が多いと聞く宝くじ売り場まで、電車を乗り継いで買いにいったこともある。

その日は雨が降っていたのだが、着いたらすでに長蛇の列。うねうねと何重にも続く列は、ディズニーランドかUSJの人気アトラクション並みだ。

金や黄色のお財布を握りしめている人、呪(まじな)いのようなものが書かれた袋を持っている人もいる。私の前の人は150枚買っていた。バラ100枚、連番50枚だ。その後で、私は小さな声で、「バラで7枚お願いします」と言った。

そして、そばに置いてあった7億円分の金塊のレプリカに手を合わせる。

「どうか今度こそ当たりますように」

だが結果は、末等すら当たらなかった。

こんなトホホな母親を見て、子どもたちは、

「宝くじじゃなくて、外れくじばかりやね」

とあきれている。