みんな「本屋を無くしちゃいけない」って思っているけれど

―――今、自分の好きな本を並べた本屋さんを始めたい、と考える人はとても多いように感じています。実際、小規模な書店を立ち上げる方もいらっしゃいますが、反面、ツイッターなんかを追っていると、2,3年くらいで閉店、というお店も多くみられていて。

竹田:それくらいの時期に、やる気だけではどうにもならない現実にぶつかるというか……。自分たちの世代は何かと『勝ち組』『勝利こそすべて』といったキーワードが頭に叩き込まれてきたように感じています。でも『負けない』『生き残る』のも大事ではないかと。勝たなくてもいい、でも負けないためにはどうすればいいか。その戦略を考えてきたのが自分で、このライオン堂なのかなと。

清水:なるほど。

竹田:ただ書店経営を志す人であっても、そこが一致するわけではない。やっぱりビジネスモデルとして『儲かる』『利益をあげる』という目的を掲げる人も当然いて、それだとなかなか成り立たなくなっちゃう。商売だけど、やっぱりどこか慈善事業でもあるんですよね。書店経営は。

清水:わかります。

竹田:ただそういう発想も、決して僕個人のものではないんです。実は、いま街に残る小さな本屋さんのほとんどが考えているはず。公共的な場所として残ってきたのだから、街から無くしちゃいけない、ってみんな思ってる。でもその思いが残念ながら言語化されてこなかった。みんな、考えが行きつく先はあまり変わらないはずなんですが。自分はそれを言語化して、発信し続けてきたから、メディアから『面白い』って取り上げてもらえるようになった、というだけで。

清水:言語化。

竹田:たとえばカフェって、入店したらお茶を飲む場所、つまりお金を落とさざるをえないじゃないですか。でも街の本屋は、本を買わずにそのまま出ることもできる。ふらっと立ち寄ることが許された、珍しいお店なんですよね。それが経済的な問題とか、ネットとかの台頭でなりたたなくなってきたのが現状ですよ、このまま街から消えてもいいんですか、ってことを伝えたりしながら、10年がんばってきました。

【中編はこちら】赤坂から書店が消えたのは「本屋がそこまで美味しい商売ではない」から?「本を仕入れて売る」ことをあらためて考える

【後編はこちら】失われつつある街の本屋さんにようやく見えた光とは?「本を買う」以外の方法で「書店を支える」ということ