自立心をうながすのも援助の仕事

私の働いているボランティア組織では、できれば途上国の事業計画にかかる費用の51%は申請者が出すことを原則として考えている。もちろんそんな理想的ケースは多くないのだが、それが自助努力(じじょどりょく)というものだ。

助ける私たちの方でも、残りの49%を支援するのだから「うちがあそこの暖房、全部なおしてあげたの」などと思い上がることなく、謙虚な気持ちを持ち続けられる。

モンゴルにも同情すべき点は多い。まず人口(231万人)が少ない。牧畜という国内主要産業は、個人の収入を把握しにくい。従って課税がうまくいかない。

しかしこれからは、全額援助といった形態だけは、どこの国に対してもやめるべきだろう。

別に申請者が51%、援助する側が49%という比率に固執する必要はないが、自らを助けようという意思のない相手は、お金を出せば出すほど、依頼心が強くなる。政府は怠ける。

出さないことは辛(つら)いが、私たちはその国の自立を考えるために、悲しみを持って理性に殉ずべき時に来ていると思う。

※本稿は、『幸福は絶望とともにある。』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。


幸福は絶望とともにある。』(著:曽野綾子/ポプラ社)

自身の経験にもとづく問題提起を行ってきた著者が、閉塞状況の日本に一石を投じるエッセイ。
1997年から2000年に毎日新聞、産経新聞などに掲載したものをまとめて単行本化した書籍の改装版。