曽野さん、日本には有能でありながら、”魂”の教育が足りていない人が多いように感じているそうで――。(写真提供:Photo AC)
「日本人は甘ちゃんなのに、いささか恥ずかしいほどの利己主義者である」と手厳しく指摘するのは、自身の経験にもとづき、世間へ問題提起を続けてきた作家・曽野綾子さんです。曽野さんはボランティアとして海外に足を運ぶなかで、現在の日本の社会や教育、閉塞状況に危機感を強めていたそう。その曽野さん、日本には有能でありながら、”魂”の教育が足りていない人が多いと感じているそうで――。

日本人は恥ずかしいほどの利己主義者

最近の日本の様子に危機を感じ、将来を憂う人はあちこちにいるのだが、時々その人たちの議論を聞いていると、不思議な感じに囚われることがある。

省庁の編成を変えることや、金融破綻(はたん)を乗り切ることはもちろん差し当たり大切なことに間違いないけれど、どうしてこういう社会になったか、という基本の部分については、あまり考えないらしく、議論にも出ない。

私がその理由だと思っているものは、どんなふうにも表現できる。日本人が本を読まなくなったから、でもいいし、哲学がなくなったから、と言っても差し支えない。

親と住まなくなったから老病死がひとごとになったのもその理由かもしれないし、あるいは道徳教育を切り捨てたからかもしれない。

私はアフリカに行く度に、日本人は何と貧困や飢えを知らないのだろうと思う。

しかし何よりも、日本人は貧しい人は必ずいい人だと思うような甘ちゃんで、そのくせ、いささか恥ずかしいほどの利己主義者である、と言ってもいいかと思う。こういう状況がすべて人生の基本を考えない理由になる。