魂の教育を怠った社会

つまり私は、日本にはこれだけの有能な人物がいながら、どうしてもっと筋の通った濃厚で意識的な悪も善もできないのかと不思議に思い続けていたのだが、それは魂の教育を怠ったからだとしか思えない。

しかし今、子供たちに本を読ませようという運動も起きないし、道徳教育を始めようという機運もない。

『幸福は絶望とともにある。』(著:曽野綾子/ポプラ社)

今度の新しい公務員の倫理規定のようなものの内容を、私はまだ正確には知らないのかもしれないが、倫理規定を作らねばならないというのは、大人に幼稚園の児童用のお行儀を教えているようなもので、ほんとうは恥ずかしいはずだろう。

もし一人一人が、公務員としてのあるべき姿をわかっていたら、そんな規則はなくても済んだはずなのだが、相変わらず公務員は成績上は秀才でも、大人になっていないから、常識的な判断力も哲学も持てないので、更に厳密な規則を作る必要が出てきたのである。