志村さんいわく、がん治療は自身の選択を後悔しないよう、偏った情報にとらわれずたくさんの情報を知ることが大切だそうで――(写真提供:Photo AC)
誰もが経験する肉親や親しい人との別れ。「人がこの世を去ってからも、応援(エール)の思いはずっと生き残る。決して消えたりしない。まるでお守りみたいに」と話すのは、バースセラピストとして多くの人の誕生や死にかかわってきた志村季世恵さんだ。長年家族ぐるみで親しくし、晩年に寄り添った俳優・樹木希林さんからのエールは、その後の志村さんを支えてくれたといいます。ある日、友人の内田也哉子さんから「食事をしながら話を聞いてほしい」と電話を受け、向かった場所で待っていたのは――。

始まり

友人の内田也哉子さんからいつもとは違うかしこまった電話があったのは、もうずいぶん前のことです。でも私は、そのときのことを鮮明に覚えています。

「近しい人にがんの再発が見つかってだいぶ進行しているの。その人が季世恵さんと会いたいと言っているの。お店を予約するので食事をしながら話を聞いてもらってもいいかな?」

という内容でした。

指定された場所は、個室のある静かな和食のお店です。お部屋に通されると也哉子さん、そしてお母さんの内田啓子さんが座っていました。

内田さんの芸名は樹木希林さんです。お読みくださる方には馴染みがあると思うので、ここからは希林さんと記していこうと思います。