何を食べたのか思い出せない
このような食事の場を設けるなんて、かなり悪い状態なのだろうかと心配になりましたが、希林さんはこれからの治療方法について考えていたのです。
「以前にも話したことがあったけれど、乳がんのときには外科手術を受けて乳房をとったって言ったでしょう? 周りのリンパ節もとった。でも術後の体への影響は想像以上に大変でね、それなのに再発しちゃったのよねぇ。抗がん剤治療を勧められたけれど、それだけは嫌でもう断ったの。それでホルモン療法を勧められているのよ。私のがんのタイプには合うそうだけれど、気乗りしないので自然療法を中心にしようと思ってね。それについてどう思う?」
と私に質問なさるのです。
お箸を持つ機会を失っている私を見て二人は「いいのよ、食べながらで。ほら冷めちゃう。食べて」と促してくださるのですが、私はこの日、何を食べたのでしょう。思い出せません。
すでに心は決まっているように思いましたが、ご自身がなさった選択を後悔なさらないように質問をしてみました。