「近しい人」の正体

私は頭の中で考えを巡らせていました。「近しい人」とは、也哉子さんの友人ではなくお二人にとって共通に関わる方なのだろうか。その方は後から来て同席なさるのか。

でも座卓に配置してあるお箸は三膳しかありません。三人でお話しするということ? 私の視線が泳いだことに気づいたのでしょうか。

『エールは消えない-いのちをめぐる5つの物語』(著:志村季世恵/婦人之友社)

「季世恵さん、忙しいのに今夜はありがとう。いつも家で会っているのにかしこまった感じよね。そうなの。近しい人ってばあばのことだったの」

と也哉子さんは言います。私は内心動揺しています。

間を空けずにご本人が話し始めました。

「たまには外で食事をしながら話すのもいいかなと思ってね。私、がんが再発したのね。だいぶ進行していて」