『ラスト サムライ』は、2003年に公開されたハリウッド映画。監督はエドワード・ズウィック。トム・クルーズの他に、真田広之、中村七之助なども出演している。ほとんどすべてがオーディションによる配役だというのも驚きだ。

――オーディションの情報を漏れ聞いた時は、僕は積極的じゃなかった。でも奈良橋陽子さん(キャスティングディレクター)が、非常に熱心に奨めてくれて。

その時たまたま僕は大阪でNHKの仕事をしてたんで、京都にロケハンに来ていた監督に会いに行きました。特に手応えは感じなかったんだけど、あとで聞いたら最初に会ったのが僕だったそうで、その後100人以上の方々と会ったようですが、やっぱり僕にもう一度会おうということになって。

そこから、もう少し英語をブラッシュアップして、ビデオオーディションを数回重ねて決まったんです。でも、いつからいつまで撮るとか、日本みたいに予定がきちんと出ないんですよ。いつ始まるかもよくわかんない。最終的にはスタートの一ヵ月前くらいにやっと決まった。

最初のロケ地の姫路へ向かう関空行きの飛行機の中で、僕の前に座っていた監督が、着陸した途端に「ああ、やっと撮れる!」ってガッツポーズしたんです(笑)。やっぱり紆余曲折あったらしくて。撮影は結局、8ヵ月かかりました。

でも映画が出来上がってからのインパクトのほうが強かったです。だって3日間かな、1日12時間ぐらいフルにプロモーション活動をやりましたから。1日目はドメスティック……アメリカ国内。あとの2日はインターナショナル。UKとか南米とかスペイン、それにアジアとか。

あらゆるところから記者たちが来て、日本の伝統とか文化とか、この作品における日本の描かれ方とか、かなり深いところまで興味を持ってくれて。映画の文化的価値を、発信する側も意識しているし、受ける側もちゃんとそれを感じ取ってくれる。やっぱりこれがハリウッド映画の懐の深さなんだろうなと思いましたね。