これは、患者さんに、認知症の中核症状のひとつである「見当識障害」が出ているせいです。

「見当識」とは、自分が今いるのが「いつ」「どこ」なのか見当をつける能力のこと。

「今は11時半だから、そろそろお昼ごはんだな」とか、

「ここは自宅の台所だから、トイレは廊下を右に曲がったところだな」とか、

そういったことを理解する能力が「見当識」です。

認知症が進行すると、これがうまく働かなくなって、患者さんは自分が置かれた状況がわからなくなります。

病気が進行すると「だれ」もわからなくなるため、家族の顔を見ても「あなたはどなたですか?」と言いだすこともあります。

親御さんが自分のことを忘れるのは、子どもさんからすると、非常にショックです。

だから、ナカハシさんの娘さんも、つい毎朝のように聞いていたわけです。

『ボケ日和―わが家に認知症がやって来た!どうする?どうなる?』(著:長谷川嘉哉/かんき出版)