「奇跡が本当に実現したことに、心から感謝した」(写真提供:須田桃子氏)
新型コロナウイルスの流行により、全国ほぼすべてのコンサートが中止になるなど、追い込まれてきたオーケストラ奏者ら音楽家たち。2022年12月、長い闘いを乗り越えてきたトッププレイヤー15名が集い、「奇跡の一夜」とも言える豪華な有観客コンサートが開催された。コンサートの名は、「『共生へのアンサンブル』コンサート  ~“孤独のアンサンブル”をこえて~」。一体どんな演奏会だったのだろうか。開催のきっかけとなったテレビの特集番組「孤独のアンサンブル」の生みの親で、コンサートの企画演出も担当した元NHKプロデューサー・村松秀さんが振り返る。

「共生のアンサンブル」コンサートのスタート

コロナ禍の緊急事態宣言下に、たった一人だけの「孤独の音楽」を奏でた、9つのオーケストラのトッププレイヤーたち15人が集う奇跡の有観客コンサート「共生へのアンサンブル」。

超絶に忙しいメンバーたちゆえ、リハーサルを全員で行うことは最後まで叶わなかった。初めて15人全員が揃ったのは、コンサート当日の12月1日13時、NHKホールの舞台上だった。奇跡が本当に実現したことに、心から感謝した。

さっそくゲネプロが始まった。

孤独の演奏から始まる前半を、客席で観ていた一人のメンバーが、人知れず涙を流していた。NHK交響楽団のオーボエ・イングリッシュホルン奏者、池田昭子である。ホールの壁いっぱいに映し出された「孤独のアンサンブル」での奏者へのインタビューや無人だった東京の夜景の映像を見て、あのときの辛さ、切なさが一気に思い出されたのだという。

広いNHKホールの定員の4倍もの応募があったという、クラシックでは稀有の人気となった今回のコンサート。開場するや、客席が次々に埋まっていく。

19時。

いよいよ「『共生へのアンサンブル』コンサート ~“孤独のアンサンブル”をこえて~」のスタートである。