人間は自分のことさえ正しく評価できない

「このテストでは最下位だったけれど、高校は3年あるのだから、3年間で帳尻を合わせればいいんだ」とも考えました。それから、IQは高くなくても、人の2倍勉強すればなんとかなることもわかりました。

おかげで、ぼくは優秀な同級生のなかで自分も優秀だと錯覚したり、逆に劣等感にとらわれることもありませんでした。

「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる認知バイアスは、成績の悪い学生は自分を高く評価したがるのに対して、成績が極めて優秀な学生は自分を低く見積もるというものです。

人間は自分のことさえ正しく評価できないのです。だから、自分は優秀だ、いや優秀じゃないなどと振り回される必要はないのです。

学生時代は成績、偏差値、出身大学。社会に出てからは会社のネームバリューや年収……さまざまな物差しで評価されがちです。

60代になって、そうしたものから卒業したはずなのに、いまだにとらわれている人もいます。なかには、子どもや孫への評価を、自分への評価のように考える人も。そんなものに一喜一憂しても、虚しいだけです。

自分を高く見積もることも、劣等感にとらわれる必要もない。
トップでもビリでも、「よく生きてきた」と自分をほめてあげよう。

※本稿は、『60歳からの「忘れる力」』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。


60歳からの「忘れる力」』(著:鎌田實/幻冬舎)

“忘れる”ことを恐れないで!

「名前が出てこない」「昨日の夕飯は何だったっけ」
「また同じ本を買ってしまった」……
60歳前後になると、「もの忘れ」の悩みが増えてくる。
しかし、人生の8割は忘れていいことだ。
長年にわたって高齢者医療を牽引する著者が教える、
面倒なことは捨てて、好きなことだけで生きるためのヒント60。