祖母は何を伝えようとしていたのだろうか
画面の向こうにいた祖母は「あぁーー」「うぅーー」という、言葉にならない叫び声のような音しか発することができなくなっていた。祖母はあのとき何を伝えようとしていたのだろうか。
十分間の面会時間の最後の方は、画面越しにただ見つめ合うだけになった。
スマートフォンを通しての面会は、回線が切れた瞬間に自分の時間に引き戻される。ずるずると面会時間を伸ばすことも、名残惜しく手や肩をさすってあげることもできない。数日前から楽しみにしていたのが馬鹿らしいほどに、味気なかった。
祖母は結局、最期まで退院できなかった。LINE面会の三ヶ月後、病院で息を引き取った。
※本稿は、『The Last Years/最後の旅』の一部を再編集したものです。
『The Last Years/最後の旅』(高重乃輔)
島の自然は強く、厳しく、優しい。祖父と祖母はそんな島の一部であるかのように、エネルギッシュでいつも自然体な人だった。二人はずっと島で生きていき、やがて亡くなれば、島の風や土になるものと思っていた。だから二人が、叔母の住む福岡で余生を過ごすと聞いた時は、驚き、そして、寂しく思った。祖父は九十四歳。身体は元気だったけれど、物忘れが多くなっていた。祖母は八十八歳。怪我が続いて、介護施設と病院とを出たり入ったりしていた。二人だけで島で暮らすのは、だんだん難しくなってきていた。でも、だからといって、晩年になってどうして島を出なくてはならないのか。二人は長い間、そこで暮らしてきたというのに。私は、島を離れることになった二人を、写真に残したいと思った。