出世したいという野心はない

私はこれが立身しようの、出世しようの、名を揚げようの、名誉を得ようのというような野心は今日でもその通り何等抱て居なかった。

ただ自然に草木が好きで、これが天稟の性質であったもんですから一心不乱にそれへそれへと進んでこの学ばかりはどんな事があっても把握して棄てなかったものです。

しかし別に師匠というものが無かったから私は日夕天然の教場で学んだのです。

それゆえたえず山野に出でて実地に植物を採集しかつ観察しましたがこれが今日私の知識の集積なんです。