花をみることは楽しい
植物が好きであるために花をみることが何より楽しみであってあく事を知らない。
誠にもって仕合せな事だ。
花に対すれば常に心が愉快でかつ美なる心情を感ずる。故に独りを楽しむ事が出来、あえて他によりすがる必要を感じない。
故に仮りに世人から憎まれて一人ボッチになっても、決して寂ばくを覚えない。
実に植物の世界は私にとっての天国でありまた極楽でもある。
私は植物を研究しているとあえてあきる事がない。
故に朝から晩まで何かしら植物に触れている。従って学問上にいろいろの仕事が成就し、それだけ学界へ貢献するわけだ。
中には新事実の発見も決して少くないのは事実で、つまりキーをもって天の扉を開くというものだ。
※本稿は、『好きを生きる―天真らんまんに壁を乗り越えて』(興陽館)の一部を再編集したものです。
『好きを生きる―天真らんまんに壁を乗り越えて 』(著:牧野富太郎/興陽館)
2023年NHK朝ドラマ『らんまん』主人公、牧野富太郎の生き方。 珠玉の随筆集。 好きなことだけをして生きていく。 妻の死、実家の没落、借金、大学での待遇の不遇……。 いくつもの壁を乗り越えて、好きを貫いた生き方。 やりたいことだけすれば、 人生、仕事、健康、長寿、すべてがうまくいく。 体が弱くいじめられがちな少年だった牧野富太郎。 植物の魅力にとりつかれ才能を発揮してゆく。 「植物学」を独学で習得し、東京帝国大学植物学教室へ。 貧しさや困難に見舞われながらも 「草を褥に木の根を枕 花と恋して九十年」の言葉どおり、 ひたむきに植物を愛し、その魅力を伝えることに情熱をそそいだ生き方とは。