現場への差し入れ「卵サンド」を手作り
そんなわけで、久しぶりにスタジオに通う日々が戻ってきました。
出演者の皆さんより早く着き、スタジオでお出迎えしたいので、5時に起きてシャワーを浴びて出かける準備をします。その日の撮影状況によりけりですが、遅いときは、家に戻ってくるのが夜10時、11時になることも。ただし外にロケに行く日は、現場の皆さんに気を遣わせると申し訳ないので、遠慮しています。
スタジオに行く前日の夜には、翌日の差し入れのため、卵をたくさん茹(ゆ)でます。相葉さんに、「なにが好物なの?」と聞いたら「卵」という答えが返ってきたので、当日朝、軽食用に卵とハムのサンドイッチをつくることもあります。
以前はよく、おにぎりをつくって撮影現場に差し入れしていましたが、『ひとりぼっち』の現場にはおにぎりの達人がいらして指導してくださっています。ですから、さすがに今回ばかりはおにぎりというわけにはいきません。
撮影期間は約1ヶ月。その後、編集作業に入ります。もちろん、編集にはすべて立ち会い、細かい点までしっかりと考え、必要に応じて指示を出します。久々にドラマ制作の現場に戻り、心身にエネルギーがみなぎり、ようやくいつものペースが戻ってきた気がしました。
※本稿は、『歳はトルもの、さっぱりと』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『歳はトルもの、さっぱりと』(著:石井ふく子/中央公論新社)
『渡る世間は鬼ばかり』などホームドラマで知られる石井ふく子さんは96歳の現役プロデューサー。その暮らしは、縁を大切に育てる「おかげさまの心」にあふれています。近所に住む女優たちに「ちょいと菜」を差し入れ、医者通いの輪を広げ……つかず離れずさっぱりと、それでいて情深い"世話焼き"は、往年のスターたちに学び、磨かれました。ひとりで生きてきたけれど、人はひとりではない。石井ふく子流、老いを生きる知恵が満載。