すべて「サブ」扱いの男性

さて、男性はどうだろうか。確かに母子手帳の中身を読むことはできる。

妊婦健診に同伴して話を聞くこともできる。母親教室ではなく「両親教室」として開催している自治体・病院も多く、教育を受けることもできる。産後の健診も同伴しても良い。

しかしすべて「サブ」扱いなのだ。

正直に言うが、産婦人科医や助産師はあくまで「女性の身体・妊娠・出産」の専門家だ。

父親は専門外とは言わなくても、メインのケア対象ではない。妊娠・出産を実際にするのは女性であり、それに伴う困りごと、ケアすべき対象も当然、妊婦である女性なのだ。

「女性→母親」の支援は重要な仕事だが、「男性→父親」を支援するのは本業ではない。

唯一父親にも向けて提供されているのが「両親教室」だろう。以前に比べて両親教室の開催数は増えており、特に新型コロナウイルスの流行でリモート教室も増えたことにより、これまで以上に父親が参加しやすくなっている。

しかし、その大多数は「両親への教室」であり、「父親教室」として父親に特化した教育が実施されている例は非常に少ない(筆者は社団法人でこのような問題解決に実際に取り組んでいる)。

その結果、「両親教室」の実態は、「母親向けの教室に、父親も参加できる」というものになっている。

あくまでメインの顧客は母親であり、父親は「サブ」なのだ。もちろんサブであっても、ないよりはあるほうが良い。

しかし参加した父親の正直な感想は、「母親向けに話しており、肩身が狭いと感じた」「非難されているような感じだった」といったものになってしまっており、継続して参加したり、後輩パパに勧めたりしにくいのが現状だ。

形式の問題も重要だが、内容についてはもっと大きな課題がある。母親教室は「妊婦が40週にわたるフォローを専門職から受けている」という前提で成り立っている。

普段から産婦人科医や助産師によるサポートを受けた上で「集中的に知識や技能を学ぶ場所」として位置づけられており、教室単体で成り立っているものではない。

一方、いきなり両親教室に参加した父親は、妊娠の仕組みや基本などについては教えられ ないまま、「抱っこのしかた」「沐浴のしかた」「おむつ替えのしかた」を教えられ、最後に「妊婦体験」をするのである。

もちろんこれらが不要とは言わないし、すぐに使える大事なスキルだ。しかし基礎が抜けているから、結局産後には忘れていて、また母親からon the jobで教えてもらうことになる。

妊娠中に父親の必要性が一番高いはずの「緊急時」に対応できる知識・スキルは身についていない(写真提供:Photo AC)

このような形式ゆえに、母親が自分で調べたり相談したりする知識、例えば妊娠中の様々な悩みや合併症、リスクについては十分に学ぶことができない。

結果として、妊娠中に父親の必要性が一番高いはずの「緊急時」に対応できる知識・スキルは身についていないのだ。