(撮影:本社・奥西義和)
俳優の高知東生さんが、自伝的小説『もぐら』を刊行し大きな反響を呼んでいます。2016年6月、覚せい剤と大麻の取締法違反の容疑で逮捕された後、現在は俳優復帰を果たし、依存症の啓発活動を行う高知さん。なぜ小説の執筆に挑戦したのか。つらくても、なかったことにしたい過去と向き合うことが必要だと思ったそうで――。
(構成:丸山あかね 撮影:本社・奥西義和)

依存症からの再生の道

2022年12月、小説誌に短篇小説を初めて発表した時、反響がすごかったんです。「ホントに本人が書いてるの?」って(笑)。「表現力に驚いた」とか「感動した」なんて言っていただくと嬉しくて。それ以上にありがたい気持ちでいっぱいになりました。

小説を書くことは、生き直そうと決めた僕に神様が与えてくれたチャンス。あるいはエールを送ってくれているのだという気がしてなりません。

2016年6月、僕は覚せい剤と大麻の取締法違反の容疑で逮捕され、懲役2年、執行猶予4年の判決を受けました。自業自得とはいえすべてを失い、絶望と孤独と不安に苛まれながら依存症の治療を受ける日々の中で、死のうと思っていた時期もあります。

再生の道を歩み始めたのは、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表を務める田中紀子さんとの出会いが大きかった。田中さんの勧めで依存症患者が語り合う自助団体の集いに参加するようになり、19年9月に依存症予防教育アドバイザーの資格を取得してからは、講演活動などをしながら今日に至ります。