独創性が人間を飛躍させてきた
コンピューター開発の初期で有名な人は、アラン・チューリングというイギリスの数学者です。エニグマというナチスドイツの暗号は絶対に解けないと言われていたのに、計算機を使って解読に成功しました。その機械が発達してコンピューターになっていったわけです。
ダートマス会議は、コンピューターの可能性を議論する場で、その後、急速にその性能が向上していきました。機能の発展が決定的になったのは2000年代以降で、機械学習のディープ・ラーニングという技術で一挙に人間の頭脳のような認知作業が可能になってきました。外界の刺激を脳に取り込んで概念化し、その知識を取り出すという作業をコンピューターができるようになったのです。膨大な知識を取り込み、いつでも取り出してくれるわけで、大きなデータになるほど正確になります。
この人工知能がさらに発展していくと、どうなるか。コンピューターの指示することが最も的確に見えて間違いが起きないとすると、人間はあらゆることで機械に従えばいいということになるかもしれません。それは困ったことだと、誰もがなんとなく感じます。独創性というものが人間を飛躍させてきた歴史を知っているからです。
コンピューターの示すデータは人間が経験したことに基づいているわけですから、さらに飛躍して答えを出すことを期待できない。これからのAIには独創力も付けられるという学者もいますが、私はできないと思っています。逆に言えば独創性とか創造力というのは、コンピューターに支配された社会で、唯一人間らしさを発揮できることなのです。