(出典:『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』より)
「共学トップ」の超進学校・「渋幕」(渋谷教育学園幕張中学高校)と「渋渋」(同渋谷中学高校)。渋幕創設からわずか十数年で千葉県でトップの進学校に躍進させた田村哲夫氏は現在、同理事長・学園長を務めるかたわら、中1から高3までの生徒に向けた「校長講話」を半世紀近く続けており、その内容は現代社会に生きる幅広い年代の視野も広げてくれる。高校に進学する前、中学3年生に向けて行った最後の講話とは――。

予測しにくい時代だからこそ予測が必要

中3の最終回は、なぜ学年のテーマが「創造力」なのかという話をまとめて、高校の準備に入りたいと思っています。これからあなた方が生きていく上で大事なのは、「バックキャスティング」という考え方です。

釣りをする人は知っていると思いますが、釣り針を投げ込むことをキャストと言って、バックキャストは後ろに投げ込むという意味です。この場合、後ろというのは、未来なんです。未来に針を投げ込む。未来は前じゃないかと思うけれど、そうじゃないんですね。

スティーブン・スピルバーグ製作の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という有名な映画があるでしょう。未来に帰るという意味で、まさに欧米的な発想です。バックキャスティングは未来を予測し、そこから遡さかのぼって今何をすべきか考えるという手法で、既に2030年とか2050年の予測などが行われています。非常に予測しにくい難しい時代だからこそ、君たちが生きていく上で持ってほしい姿勢です。

その未来で一番気になるのは、AIのことでしょう。日本語では人工知能と呼ばれていますが、artificial intelligenceという英語が使われ始めたのは、1956年。アメリカのダートマス大学で開かれたダートマス会議で、人工知能という学術研究分野が確立されました。