(出典:『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』より)

ガリレオの裁判とサイエンスの出発

二番目は、ガリレオ・ガリレイの裁判です。ガリレオは現代社会の考え方の中心になっているサイエンスの発明者で、彼の考え方を基盤に科学は発展したといえます。彼は自分で作った望遠鏡で月を覗のぞいてクレーターを観察し、地球と同じ天体だということを理解しました。

その頃、月は透明で明るく、影のない天上世界だと信じられていたのですが、ガリレオはそれが誤りだと確信し、あらゆることを自分の手で実験し、確認して、事実を説明することを試みたのです。その上で正しい数式を見つけ出せば、実際に実験をしなくても予測ができるようになります。

彼の主張する地動説は、聖書の「大地は不動である」という記述に反していたので、とんでもないと宗教裁判にかけられました。ガリレオは抵抗して裁判の後、「それでも大地は動いている」と言ったという有名な話が残されています。しかし、裁判記録によると、ガリレオは最初から「地動説など信じていません」と言っていました。

キリスト教に反するようなことをしたら火あぶりの刑になってしまったためでしょう。ガリレオは終身刑を宣告された後に減刑となり、軟禁されて一生を終えました。結果的に、彼は科学に基づいた考え方を裁判で主張しなかったために生き延び、自らの考えを本にして残すことができました。そこからヨーロッパで科学が発展していったのです。