「四六時中同じ部屋で暮らしていたら、衝突が絶えなかったかもしれません。実は私たち、結婚当初から《家庭内別居》を選択しています」(撮影:大河内 禎)
56歳の時に3度目の結婚をした奈美悦子さん。夫婦円満でいられる秘訣は、それぞれが自分の時間を持てるスペースがあることだと言います(構成=丸山あかね 撮影=大河内 禎)

勝ち気な性格を熟知しているから

夫と結婚して16年になります。当初はお互いに忙しいすれ違い夫婦でしたが、夫がカメラの仕事をリタイアし、私も仕事をゆったりモードに切り替えた今は、朝から一緒に犬の散歩をしたり、スーパーへ行ったり、旅行へ出かけたり。周囲の人たちからは「仲良しね~」と言われるのですが、もちろん腹の立つこともありますよ。

夫は一人っ子の九州男児。かなり頑固なタイプなのです。そのうえ口数が少なくて、気の利いたことを言ったためしがありません。腕を振るってお料理を作っても無言。張り切ってお洒落をしても無言。それでいてダメ出しはする。「犬の毛が落ちてるよ」なんて言うから、だったら自分で掃除してよ、とイラッとくるんですよ。

自分で言うのもなんですが、私は相当な綺麗好き。わが家はどこもかしこもピッカピカです。キッチンを使うたびに換気扇やコンロを磨き、水滴一つ残さないように拭いているため、家に来た友達によく「キッチン使ってないの?」と訊かれるほど。だから、わが家には、年末の大掃除なんてありません。

夫にダメ出しされた時は「申し訳ありませんでした」と返すものの、悔しくて悔しくて、後で布団をかぶって、「ムカつく~」と悶絶。それでも翌朝は、「おはようございまーす」と努めて明るく接しています。だからたぶん夫は、私のことを「いつも機嫌のいい人だ」と思っているはず。(笑)

実は、前の結婚の時には夫婦喧嘩ばかりしていたんです。でも、ある時、怒りまくっている自分の顔を鏡越しに見てギョッとしました。まるで鬼じゃないかって。それじゃあ愛されないわよね。そんなわけで今は喧嘩しないと決めています。私は、一度火がついたら、相手にとどめを刺すまで戦い抜いてしまうタイプ。そんな勝ち気な性格を熟知しているから、「負けるが勝ち」と自分に言い聞かせているのです。

とはいえ四六時中同じ部屋で暮らしていたら、衝突が絶えなかったかもしれません。実は私たち、結婚当初から《家庭内別居》を選択しています。寝室が別なだけではなく、日中も私は2階、彼は3階で主に過ごす。3階にはお手洗いやお風呂もついているし、ミニキッチンもあるので、内階段でつながっているとはいえ、マンションの別々の部屋で暮らしているようなものです。

ただ食事は2階にあるダイニングで夫婦一緒に摂っています。彼は自分のこだわりで自室にテレビを置いておらず、見たい番組や映画があると2階で一緒に鑑賞することも。それでも、20時半には3階へ上がってしまうので、そこからは完全なる私のおひとり様タイムです。

「あー、疲れた」なんて独り言を言いながらビールを飲んだり、本を読んだり、映画を観たり、ゆっくりとお風呂に入ったり。とにかく自由。一人の時間を確保しているからこそ、心の平安を保つことができているのでしょうね。