完璧主義にさようなら

夫とは反対に、私の部屋にはベッドと小さなサイドテーブルしかありません。3年前に1階の6畳間をクローゼットにして、衣装はそちらへまとめています。昔は衣替えが大変でしたが、今は天井までしつらえた棚の上半分を夏物、下半分を冬物と分けて入れていて、5月になると上下を入れ替えるだけ。

私が70代になって変わったと思う点は、「完璧にしたい」という考え方から自由になったことかしら。以前は、毎日お風呂をピカピカに磨いて、週1回は家中の窓を拭いていたんです。スケジュール表には、どんな家事をいつするかのリストがびっしり。その通りに生活をすることにこだわっていました。

でも、そんな妙な意地を捨てたら楽になって。今は、「窓拭き? 気になったら拭けばいいかしら」くらいの気持ちでいます。

振り返ると、ひとりで子育てをしながら仕事をして、家事も手を抜かず、塵一つない部屋に暮らしていた昔の自分を褒めてあげたいわ(笑)。今はそんな体力はありません。一つひとつのことを少しずつ、でも確実に手放しているところです。

夫と息子の間を無理に取り持とうとすることもやめました。夫と息子は良い関係ではありますが、もう息子も結婚して自分の家庭を持っていますからね。息子から食事に誘われた時も、念のため夫に「あなたも行く?」と言うけれど、断られたら「わかりましたー」とあっさり引くことに。そして、「行ってきまーす」と気持ちよく出かけています。

いちいち気を揉んでいたら私も疲れるし、疲れるわりに報われない。あんまり深く考えないで、それぞれがしたいようにすれば、自然とよい距離感が生まれ、良好な関係性が保てるのだということに気づいたのです。

無理して友達に合わせることもやめました。あっちにもこっちにも義理で顔を出すのは体力的にも難しい。日程に余裕があって、行きたい店ならば行く。たとえ相手に悪く思われても気にしません。いい感じで鈍感になってきた気がします。目も霞んで、埃も見えづらくなってきましたし、年をとるのも悪くないと思ったりして。(笑)

私の目下の目標は持ち物を極限まで減らすこと。いつか夫婦でマンションに移り住み、最後はトランク一つで旅をするのが理想なのですが……。夫のモノを片づけるのが大変そうね。

どちらが先に逝くかわかりませんし、予定通りにはいかないのが人生。今は腐れ縁なのか、ソウルメイトなのかわからない夫と、自由第一の暮らしを満喫したいと思っています。