高橋さん「すべては遺伝子の仕組みにしたがって起こる現象」と言いますが――(写真提供:Photo AC)
子育ての悩みはつきないもの。ちまたには情報があふれ、「失敗はすべて自分のせい」「あとで後悔したくない」と感じているお母さんやお父さんも多いのではないでしょうか。親にできることは、「生まれてきてくれたわが子の底力を信じて、成長していく姿を楽しみに見守ること。」と語るのは、小児科医として40年間の経験を持つ高橋孝雄さん。その高橋さん「すべては遺伝子の仕組みにしたがって起こる現象」と言いますが――。

遺伝子のチカラにはっと驚く

赤ちゃんが生まれてしばらくすると、「パパかママか、どっちに似てる?」と、家族や友だち、親戚のあいだで話題になりますね。

顔立ちなどの外見は「男の子がママに似て、女の子はパパに似るように決まっているらしい」と、あたかも定説のように伝え聞きます。

小児科医のぼくとしても、顔つきだけではなく、手足の長さ、さらには性格や考え方までもが親ゆずりで、遺伝子のチカラにはっと驚くことがあります。

さて、「お酒に強い弱い」は、単一の遺伝子の働きの強弱で体質が決まる単純なパターンで、単一遺伝と呼ばれています。

いっぽう、顔立ちには複数の遺伝子が複雑にかかわっていて、このようなパターンは「多因子遺伝」と呼ばれています。身長や骨格なども多因子遺伝する個性です。

遺伝する病気にも2パターンがあって、単一遺伝子疾患、多因子遺伝疾患に分かれます。

たとえば、ホルモンの合成や脂質や糖の分解に問題がある病気は前者(単一遺伝子疾患)であることが多く、生まれつきの心臓病や口唇裂(こうしんれつ)など形の異常をきたす多くの疾患は後者(多因子遺伝疾患)です。

ちなみに、遺伝子診断でわかる病気のほとんどが単一遺伝子疾患です。これらの病気のなかには、遺伝子治療によって治すことができるものも含まれています。