擬態しながらハマる女

えりぴよのように生きるのは、パンクすぎてさすがに無理かもしれないな……と思うとき、参考になるのが丹羽庭『トクサツガガガ』の主人公「仲村叶(かの)」だ。

『トクサツガガガ(1)』(著:丹羽庭/小学館 )

彼女は、「隠れオタク」をやっているOL、つまり、社会人であることとオタクであることを両立させようとしている女である。仲村は、会社にバレないように特オタ(特撮オタク)をやる一方で、母親が「そういうモノをとてもイヤがる人」であるため、家族にもバレないように生活している。

悲しいことだが、この国でオタクであることは、バレると偏見の目で見られる危険性をいまだにはらんでいる。とくに学校や会社など「ふつうであること」「悪目立ちしないこと」を是とする組織でのオタバレは、自分の立場を危うくしかねない。

フリーターのえりぴよは、組織の論理に囚われることなくオタ活ライフを満喫していたが、仲村のような会社員はそうもいかないのである。

ちなみにふじた『ヲタクに恋は難しい』に登場するOL「桃瀬成海」も、転職先でオタ友「二藤宏嵩」とばったり会った際に「この会社でもヲタバレしたらお前のことも言いふらすから」と宏嵩を脅す程度にはオタバレを恐れている。そんな成海を宏嵩は「成海の擬態相変わらずパーペキwww」と評価しているが、それはつまり、パーペキにしないといけないくらい、抑圧されているということでもある。

『ヲタクに恋は難しい』(著:ふじた /一迅社)