本郷先生曰く、日本史には「真田幸村」のようによく知られている名前と史料に出てくる名前が異なる人物がいるそうでーー(写真提供:Photo AC)

松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第18回では、金荼美具足の遺体が信玄(阿部寛さん)のもとに届けられたことで、家康(松本潤さん)討ち死にの知らせが広まった。瀬名(有村架純さん)は動転しつつ、籠城戦への備えを家中に伝え、信長(岡田准一さん)は武田との決戦を覚悟し――といった話が展開しました。

一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第37回は「戦国武将の名前」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

「吉信」の名でよく知られていた夏目広次

前回はなんといっても、甲本雅裕さん演じる夏目広次が主役の回でした。

広次は第1話から登場していましたが、なぜか家康からずっと名前を間違えられていました。

そして名前を覚えられなかったのは、以前は彼が「吉信」という名であったが、家康を守れなかった責任から改名していたから、という背景が明かされると、ネット上では「感動した」「涙が止まらない」といった感想が続出。「神回」とも言われているようです。

実際、夏目広次こと夏目次郎左衛門は、かつて「吉信」の名でよく知られていました。それが近年、史料によって「実際は広次と名乗っていた」という事実が分かってきたのです。

時代考証の先生がそのことを指摘し、脚本家が感動的な物語へと仕立て上げてくれたのでしょうか。ともかく歴史研究の成果がドラマを支えることができたようで、うれしい限りです。