『銀河』との再会

ところが“何かの手違い”が起きます。

わくわくして帰省した玄関窓には『銀河』ではなく『よぞら』がはまっていた。

同じ宇宙にまつわるデザインでも、星々のきらめきを描いた『銀河』と、星の瞬きを描いた『よぞら』ではイメージは大きく変わります。

「本当はすべて銀河にしたかった」Tさんの「悲しくて、せつなくて」という切実さは、読んでいて私たちも胸を打たれました。

忙しくて気づかなかったというご両親も、涙ながらに訴える娘の思いに心を動かされたのでしょう。

ご両親の世代を考えると、相手のミスだったとしても一度入ったガラスを入れ替えてほしいと言える日本人は少なかったはず。

昭和の時代、クレーマーという言葉も概念もまだなかったように思います。

新築から20年後にはお父さまが亡くなり、その家も10年前には解体。大好きだった『銀河』も廃棄されてしまった。

しかし時が過ぎ、リニューアルした友人の自然食品店で『銀河』と再会。

『銀河』の作品いろいろ。プレートは「なるべく加工せず、ガラスのみで飾りたい」というお客さまのご要望を受けて作り、私たちも出店時にディスプレイとして使っています。(撮影:永禮賢(ながれ・さとし)/『想い出の昭和型板ガラス ~消えゆくレトロガラスをめぐる24の物語~』より)

もしこのとき再会した型板ガラスが『銀河』でなく『よぞら』だったら。

Tさんが私たちのサイトにつながることも、ふたたび『銀河』とともに暮らすこともなかったかもしれません。