保坂さん「相手の流儀も尊重する度量を持つことが大切」と言いますが――(写真提供:Photo AC)
人生100年時代を迎えた今日、一人暮らしの高齢者が増加しています。「ずっとひとりで寂しい、老いていくことが辛い」「これからのお金、健康の不安がなくならない」などの悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。「実は老後のシングルライフには夢があふれている」と語るのは、精神科医の保坂隆さん。その保坂先生「相手の流儀も尊重する度量を持つことが大切」と言いますが――。

自分の流儀や好みを押しつけない

誰にでも自分の流儀や好みというものがあります。

たとえば、蕎麦の食べ方ひとつとっても、蕎麦猪口(ちょこ)のつゆにちょっと蕎麦をつけて一気にツルツルとたぐる人がいます。

その流儀で食べてこそ蕎麦の香りも食感も味わえると考えているのでしょう。

もちろん、自分の流儀を貫くこと自体はなんの問題もありませんが、周囲にそれを押しつけるのはいかがなものでしょうか。

誰かと蕎麦屋に行ったとき、その人がつゆにたっぷり蕎麦を浸して食べているのを見て、こう言ったらどうでしょう。

「えーっ、そんなにつゆに浸すのですか。それじゃ蕎麦の香りが台無しですよ」

言った本人は、粋な食べ方を教えてあげたつもりかもしれませんが、言われたほうは面白いはずがありません。

その場の空気が悪くなって当然です。

相手は「この人とは二度と一緒に食事なんかしないぞ」と決意してしまうかもしれません。

また、相手が読んでいる本を見て、「それ、読んだけどぜんぜん面白くありませんよ。時間の無駄だと思いますよ」と言ったり、相手がミステリー好きだと知ると、「この本がおすすめですよ。読んだら感想聞かせてくださいね」と押しつけようとするのも、いかがなものでしょうか。

本人は親切心から言っているつもりなのかもしれませんが、言われたほうは「本ぐらい好きなものを読ませてくださいよ。情報がほしいときはこっちから聞きますから」といった気持ちになるでしょう。

このように自分流の押しつけは人間関係にひびを入れ、つきあいの幅を狭くしてしまうのです。