免疫力が落ちると、動脈硬化や高血圧のリスクも上がる
●動脈硬化……動脈硬化とは、血管の動脈が硬くなり弾力性が失われる状態です。血管の内側の壁に悪玉コレステロールや中性脂肪などがくっついて、血管を狭くしていることもあります。
こうした症状は、近年では血管に慢性の炎症が起きている状態、と考えられています。
その炎症が起きている部分には免疫細胞の一部のメンバーが集まっています。元々はトラブルが起きた血管の壁の細胞を修復しようと集まっているのですが、修復しようとする行動の結果、さらに炎症を引き起こしてしまうのです。
ですが、免疫細胞の中のひとつ“制御性T細胞”というメンバーがよく働き、IgAという免疫抗体の産生を誘導し、B細胞がIgAをたくさん作って出すと、この炎症が抑制され動脈硬化が軽減することが、動物実験では証明されています。
また人間で、動脈硬化性疾患のある患者さんと、動脈硬化性疾患のない健常者の腸内細菌を比較したところ、動脈硬化性疾患のある患者さんには、認知症の患者さんと同じくバクテロイデスという日和見菌のグループの菌が少なく、ラクトバチルスという細菌が多いという傾向があります。
●高血圧……高血圧は、心臓から送られている血液が、動脈の壁を押す力のことです。
この数値が高いということは血管を押す力が強く、常に血管に負担がかかってしまうので、壁が傷ついたり柔軟性が失われていき、動脈硬化になっていきます。
高血圧の原因は一般的に、肥満や飲酒、喫煙、ストレスなどが主な原因とされていますが、そもそもなぜ血圧が上がるのか、というメカニズムはこれまであまりはっきりわかっていませんでした。
ところが近年、免疫機能と関連があるのではないかということがわかってきています。
制御性T細胞が交感神経系を抑制することで、高血圧を軽減しているのではないかと推測されています。
ですから、腸の中で免疫細胞を増やし、元気に働いてくれるようにすることは、こうした症状の予防にもなる、ということですね。
※本稿は、『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』(アスコム)の一部を再編集したものです。
『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』(著:川本徹/アスコム)
『全身の健康の9割は腸と関係している』と言っても、言い過ぎではないと思います。
長生きの秘訣は、腸にあるのです。
日本人の腸活で「動きのいい腸を作る」ことは意外に見落とされてきた点です。
本書では、「超動きがいい腸」にする方法を食事、運動の両面からご紹介しています。