「素晴らしいから」がすべてなら、私だけでなく同じ公演を見た人はみんな同じ感情になるはずで。でも実際はそうはならないし、そうならないからこそ、私はこの気持ちが好きですごく大切にしている。私は私だけの感情としてこんなきらめいたものをもらったから、嬉しかった。私がここまで生きてきたことの意味さえ教えてくれるものだった。だから私は絶対に、このありかたの方がとてつもない奇跡だって思っている。絶対的に客観的に素晴らしいんだとその人を評価できることよりも、私の人生があって、私がこの席に座ってその人を見た瞬間が、どんな説明も必要ないくらい圧倒的に輝いて、ここにいてよかったと人生丸ごと肯定されたように感じることの方が、私にとっては重要なのだ。そんな瞬間を生み出せるその人のことが、世界で一番素敵だと思える。そして、舞台はそういう瞬間を作れるから、美しいんだ。生で見るものであり、席によって見える景色も違う。いつだって、見にきたその人がそこにいたから生まれた景色が、その人に流れ込んでいく。その人だから生まれた感情しか、そこにはない。ただ「素晴らしい」と感動させるのではなくて、見るその人の人生をいつも舞台は巻き込んでいる。だからこそ、人生を変える瞬間が生まれていくんだろうと思う。

 「好き!!!」と心が叫んだなら、疑いようがないほどにその時が最良だったんだと私は思う。もっと早くに出会っていたらこうはならない、遅くてもこうはならない。絶対に今の私にしか生まれ得ない感情として「好き」がある。今ではなく違うタイミングに出会いたかったとは思わなくて、タイムマシンがあれば今から過去に遡りたいなぁと思うだけ。私があなたに出会えたこのタイミングを私は人生の最大の正解だと思っている。もう、何も、怖くないんだよな。好きという感情はその瞬間の自分、そしてそこに至るまでの私をすべて肯定するような力があります。ここまで生きてきた理由がわかるような、何もかもが必然に思えるような。誰かを好きになれたなら、その瞬間が絶対に最良となる。人生そのものが、その最良のためにあったものになる。後悔が、一気に消えていくよ。遅すぎるも早すぎるも、「好き」には絶対起こり得ない。