宇宙で元素がつくられるまで
始まったばかりの宇宙は、超高温のカオス状態でした。それからの約3分間で、クォークが現れ、3人家族を構成して、元素の材料となる陽子や中性子がつくられていきました。
3分後、宇宙の温度が下がり、また、陽子と中性子の数が安定してきたときに、宇宙で最初の元素合成が始まります。このようなビッグバンの直後に起こった元素合成を「ビッグバン元素合成」といいます。
ときどき、元素合成は宇宙最初の3分間で起こったとして、神様がつくったカップラーメンにたとえられることがありますが、正確には3分後から20分後までの約17分間といわれており、パスタをゆでる時間に近いイメージです。
ビッグバン開始直後は陽子と中性子は同数でしたが、中性子にはすぐに崩壊してしまうという性質があり、最終的には陽子と中性子の比率は7:1に落ち着きます。
この比率がカギとなり、ビッグバン元素合成後の元素の最終的な比率が決まりました。元素合成の期間が15分程度しか続かないのも、中性子の崩壊する時間が短いことに関係しています。
現在の宇宙に比べれば無にもひとしい大きさの初期宇宙から、無にもひとしいほどの時間で、原子番号1番の水素と、原子番号2番のヘリウムが一気につくられました。ヘリウムは陽子2個と中性子2個からできるので、できる量は陽子より少ない中性子の量で決まります。計算すると、最初の元素全体のなかで水素とヘリウムの質量比は3:1であることがわかります。
このあと見ていくように、ビッグバン元素合成のあとも元素はつくられます。水素とヘリウムの量も変化しますが、基本的にはこのときの比率が圧倒的であり、そのまま保たれていくのです。