「なぜ、こんなことができないの?」

とはいえ、実際に母の介護に専念することになったとき、私はすでに60代。精神的、肉体的につらいことも多々あって、老老介護の大変さを身をもって実感しました。

一番つらかったのは、どんどん弱っていく母の姿を目の当たりにしなければならなかったこと。あんなに元気だった母がこんな姿になってしまって、と思わず泣いてしまったことも1度や2度じゃありません。「なぜ、こんなことができないの? 前はできたのに!」と、母の部屋を出た後に、行き場のない怒りで悔し涙をこぼしたこともありました。

また、いつも中腰で世話をしていたせいでギックリ腰になり、慢性の腰痛にも悩まされて。マッサージに行ってもなかなかよくならず、腰を支えるベルトを2本巻いていましたね。食事の介助をしたり、オムツを替えたりするときは前かがみの姿勢になることが多かったので、もともとストレートネックだった首がパンパンに凝り固まって、痛みもひどくなりました。

夜、グッスリ眠れないのもしんどかった。「夜中も、私が横にいたら安心だろう」と考えて、母のベッドの脇に私のベッドを並べて、隣で寝るようにしていたんです。母と私の手首を着物の腰紐で結んでね。

なぜ、そんなことをしていたかと言えば、母は自力では満足に起き上がれないにもかかわらず、「仕事で疲れているあんたを起こしたら悪いから」と、夜中に一人でトイレに行こうとして床に尻もちをつき、そのまま座り込んでいたときがあったから。そんなことをして骨折でもしちゃったら、それこそ寝たきりになって大変でしょう。

それ以来、「用事があるときは、この紐を引っ張って私を起こしてね」と、お互いの手首を結んで寝ることに。おかげで母の安全は確保できましたけど、夜中に何度も目が覚めてしまうため、日中、私自身がイライラしてしまうこともしょっちゅうで。

介護のためにツメも短く切って、ネイルもできない。睡眠不足で肌が荒れ、顔もむくんで化粧のりは最悪。そんな姿で人前に出る仕事をしなければならないことも、私にとってはたまらなくつらいことでした。