大規模な火災は森林生態系の構造を元から破壊し、植被を失った林地は浸食を受けはじめ、洪水や山地崩壊が起こりやすくなる(提供:photoAC)

 

カナダ東部で山火事が相次いで起こり、その煙が隣国アメリカにまで流れてニューヨークでは深刻な大気汚染が起きています。森林科学の第一人者である岡山大学名誉教授の吉川賢先生いわく、気候変動の深刻化は、予想がつかない広がりで森林生態系をむしばんでしまうとのこと。少しでも大森林火災の被害を抑えるべく、予防することも大切ですが、しすぎると、かえって生態系を壊す可能性があるとのことで――。

カリフォルニア州で2020年に大火災

少なくとも1970年以降、アメリカ西部で森林火災は増え続けていて、2005年までの大規模森林火災の頻度は1970年までの4倍、焼失面積は6倍になっている。そして毎年のように、「今年は観測史上最悪の森林火災焼失面積を記録した」と報じられてきた。

2020年8月16日にカリフォルニア州で落雷によって発生した火災は1ヶ月以上燃え続け、最終的に1万7800平方キロメートル以上という過去最大の焼失面積を記録した。

これは岩手県全体の面積よりも広いし、森林面積にすると岩手県と青森県の森林がすべて燃えてしまったことになる。それでもこの調子でいけば、カリフォルニア州では森林火災面積のレコードはこれから毎年塗り替えられていくだろう。

カリフォルニアは降水量600ミリメートル足らずの乾燥地で、2月から10月の乾季にサンタアナという北寄りの乾熱風が吹くと火災の危険が高まる。これまでは2ヶ月ほどが危険な季節であったが、現在は気候変動によって乾季が長引き、枯れ木も増えたので、一年中、火事が起こりやすくなっている。