北米の大規模な山火事(橘隆一氏提供)

大火災が起きた原因

カリフォルニア州が緊急事態を宣言した2020年8月の大火災の背景には、長期の干ばつと異常な高温があった。

まず1月から2月にかけてほとんど降雨がなく、記録的な干ばつに見舞われた。8月〜9月の熱波では、デスバレーで観測史上最高の54.5℃を、ロサンゼルスも9月6日に49.4℃を記録した。8月8日〜14日の森林周辺の裸地や灌木林における地表面温度は、60℃を超えていた。

しかも、カリフォルニアでは降雨をほとんど伴わない乾いた雷が発生する。つまり、2020年の火災は、長くて強い干ばつと記録的な熱波による高温でからからに乾いてしまった森林に、雷が火をつけて燃え広がったものだ。この火災の煙は、9月には北欧まで届いたといわれている。

大規模な火災は森林生態系の構造を元から破壊し、植被を失った林地は浸食を受けはじめ、洪水や山地崩壊が起こりやすくなる。多数の動植物は住み場所を失い、食物連鎖は断ち切られ、一瞬にしてまったく違う生態系になってしまう。

『森林に何が起きているのか――気候変動が招く崩壊の連鎖』(著:吉川 賢/中公新書)