脳と腸は情報を共有している
「緊張するとお腹が痛くなる」「便秘が続くと気分が優れず、イライラする」。そんな経験がある方は多いのではないでしょうか。近年、国内外で急速に研究が進み、脳と腸は互いに影響し合っていることが科学的に明らかになってきました。
精神科医の監修のもと実施された、興味深い調査があります。便秘の人と快便の人をグループに分け、精神状態を比較したところ、便秘の人は快便の人に比べて「怒り・敵意」「抑うつ・落ち込み」「疲労・無気力」「緊張・不安」などネガティブな感情のスコアが高いことがわかりました。
さらに両グループに計算や記憶力を必要とする課題を与えると、便秘の人は快便の人より脳が活性化しているにもかかわらず、成績が低いという結果に。
この調査はあくまでも一例にすぎませんが、十分納得できる内容です。脳と腸は自律神経やホルモンを介してつながっており、常に情報をやりとりしています。つまり、いいことも悪いことも瞬時に共有されてしまうのです。このネットワークを「脳腸相関」と言います。
たとえば、脳がストレスを受けると、自律神経を介してその刺激が腸に伝わり、下痢や便秘などを引き起こす。すると今度は腸がその不快感を脳に送り返すため、不眠、倦怠感、抑うつ状態などの症状が表れ、集中力や判断力が低下します。そんなやりとりが延々と続き、負のスパイラルに陥ることも少なくありません。
では、どのようにしてこの悪循環から抜け出せばいいのか。答えは簡単。腸内環境を整えればいいのです。心のモヤモヤ、イライラの原因は簡単に突き止められませんが、腸はポイントさえ押さえれば、誰でも簡単に整えることができます。
さらに注目したいのは、「幸せホルモン」と呼ばれる神経伝達物質・セロトニン。これは心をざわつかせるノルアドレナリンやドーパミンの過剰分泌を抑え、心を穏やかに、前向きな気持ちにしてくれる物質です。脳内ホルモンの一種ですが、実は9割が腸で生成されることがわかっています。
つまり腸内環境をよりよい状態に保ち、セロトニンをしっかり生成することができれば、ストレスが軽減して幸せを感じやすくなるのです。