『ルートヴィヒII世』(1986年)
芸術に生涯を捧げたバイエルン王、ルートヴィヒII世の運命を描く。雑誌の休刊により未完になっている(1986〜92年『別冊婦人公論』)

トキワ荘を出た後は、週刊少女漫画誌へと活躍の場を広げ、当時タブーとされていた男女のラブロマンス『星のたてごと』や、ロマンチックコメディ路線を確立した『すてきなコーラ』など幅広い分野の作品を手がけ、人気作家となっていく。

――週刊誌連載はハードでした。1週間で物語を作って、コマ割りをしてネームを作り、それから十数ページの絵を描くわけですから。だから編集部も長期の連載にはしなかった。

でも人気が出てくると、どんどん連載の回数が延びるんです。『こんにちは先生』というラブコメは何度も延びて、毎週のように旅館にカンヅメになっていました。10キロぐらい痩せましたよ。

でもその実績があったから、『白いトロイカ』のような歴史ロマン漫画も、無理を言って連載させてもらえたのでしょう。

最初、歴史ものを描きたいと言うと、編集者は難色を示しました。当時、歴史を題材にした少女向け漫画の連載はありませんでした。しかも、帝政ロシアでのクーデターを背景にした物語です。編集者からは、「少女読者に馴染みのないロシアの歴史、ましてや革命などは理解できないだろう。話が高度すぎる」と言われました。

結局、2週間ぐらいかけて口説き落としましたけれど。私がいつも人のしないことをするから、編集部も想像がつかないのね。

<後編につづく

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